○夕張市議会基本条例
平成25年2月28日
条例第1号
議会は、市民主権を基礎とし、市民の負託を受けて活動する市民の代表機関・議事機関である。夕張市議会は、夕張市民から選挙で選ばれた議員により構成され、同じく夕張市民から選ばれた夕張市長とともに二元代表制の下で、執行機関と健全な緊張関係を保ちながら行政への監視、条例の制定、予算の議決等を通じて政策を形成する権限と責任を有している。
本市は明治21年(1888年)の石炭の大露頭発見により、国内でも有数な産炭地として戦後日本の復興にも大きく貢献し、昭和35年には最多人口約11万7,000人を数えるに至ったが、その後、国のエネルギー政策の転換や度重なる坑内事故等により、本市の基幹産業であった炭鉱業は衰退の一途をたどり、かつて炭都と呼ばれた本市は平成2年(1990年)、100年にわたって続いてきたすべての石炭関連企業が姿を消した。本市は、地域崩壊の危機感を抱きながら産業構造の変換を目指して企業誘致に力を注ぐとともに、企業進出の後押しとなるよう大規模な観光事業を展開させたが、やがてバブルの崩壊とともに観光、リゾートブームが終息に向かった。加えて、閉山跡処理に要した膨大な社会基盤整備費や観光施設関連費、リゾート企業撤退後の諸対策費等により債務が急増していった。さらに、地域整備が不十分な時点での産炭地域振興臨時措置法の失効や三位一体改革による地方交付税削減等のため収支バランスが極度に悪化し、平成19年3月に地方財政再建促進特別措置法により総務大臣の同意を受けて準用財政再建団体となり、3年後の平成22年3月には地方公共団体の財政の健全化に関する法律によって財政再生計画を定め、財政再生団体になった。この激変する過酷な状況下においても、農業関係者は努力の結晶である夕張メロン等の特産作物を擁して本市経済を支え続けたが、市の急速な財政悪化に歯止めをかけるまでには至らなかった。
本市は、国内で唯一の財政再生団体という立場にあり、国や北海道の助言の下、財政の立て直しが優先されている。しかし今、地方分権の時代を迎え、地域の自立が求められる中、本市においては急速な少子高齢化、医療や福祉などの安心安全の確保、地元産業の再興など地域社会の喫緊の課題が山積しており、これらに即応できる自治の存在が切望されている。こうした状況から、議会では市民生活に必要不可欠な公的団体への支援並びに議会活動における政務活動費の復元など様々な基本的かつ重要な項目に取り組みながら、自立したまちづくりを進める責任を負うとともに、全国唯一の財政再生団体の議会として、今後果たすべき役割を強く認識するものである。
夕張市議会及びすべての議員は、自由かっ達な論議を通して、政策提言や政策立案を積極的に行い、市民協働の議会運営を進めながら、活力ある地域づくりを進めることを誓約して、この基本条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、夕張市議会(以下「議会」という。)が市民の負託にこたえるため、その運営の基本を明らかにし、議会と市民との関係及び議会と執行機関との関係における基本的事項を定めることにより、議会の果たすべき役割と責任を明確にするとともに、憲法に定める地方自治の本旨の実現と豊かな、まちづくりに寄与することを目的とする。
(議会の活動原則)
第2条 議会は、市長と同じく直接選挙で選ばれた市民の代表機関として二元代表制の一翼を担う。
2 議会は、市民の代表機関であるとともに市の最高意思決定機関であり、市としてのあるべき姿について政策立案を図るとともに、常に市民の立場で市政を監視し評価する。
3 議会は、その活動に当たっては、市民に対し開かれた議会と市民参加を基軸に活動する。
(議員の活動原則)
第3条 議員は、議会が言論の府であること及び合議制の機関であることを十分認識し、市民の多様な意見の把握に努めるとともに、その論点を明らかにし、もって本会議、常任委員会等においては議員間の自由かっ達な討論の推進を図る。
2 議員間においては情報の共有を図ることに努め、必要に応じ議員会議を開催する。
3 議員は、その活動に当たっては、地域における諸課題を個別だけでなく、全市的な視点で把握し、全体の福祉向上を目指して市の政策に反映するよう努める。
(会派)
第4条 議員は議会活動を行うため会派を結成することができる。
2 会派は理念政策等を共有する議員で構成する。
3 会派は議会運営及び政策形成に際し、会派間での合意形成に努めるものとする。
(政治倫理)
第5条 議員は、市民の代表としての選良であることを自覚し、常に市民全体の利益の実現を目指して行動するものとし、個人又は特定の企業及び団体のために有利な取り計らいをしてはならず、また、議会活動を通じて金品等を授受してはならない。
(議会と市民との関係)
第6条 議会は、法令及び他の条例等に特別の定めがあるものを除き、二元代表制の一翼を担う責任において情報の公開を基本とするとともに、市民に対する説明を十分に行うものとする。
2 議会は、常に議会広報紙(議会だより)ほか多様な広報手段を活用し、市政に係る重要な情報を議会独自の視点から幅広く市民に周知するよう広報活動の充実を図る。
3 議会は、市民の声を広く政策立案につなげるため、市民及び各種団体等との意見交換会等を年1回以上開催するものとする。
4 議会は、多くの市民が議会と市政に関心を持つことを目的に傍聴機会の拡大を図るため、年1回以上夜間議会を実施する。
5 議会は、常任委員会、特別委員会等の運営に当たり、参考人制度及び公聴会制度を十分に活用して、市民の専門的又は政策的識見等を議会の議論に反映させるものとする。
(議会と執行機関との関係)
第7条 議会は、本会議及び委員会において、事案の論点及び争点を明確にするため、執行機関に対し事前に十分な資料提供を求めるものとする。
2 本会議における一般質問において、会派の代表者質問を行うことができる。
3 一般質問は、一問一答の方式で行うこととする。この場合において、議長は執行機関に対し、質問者の論点を明らかにするための反問を認めることができる。
(議会の活性化)
第8条 議会及び議員は、時代のすう勢や市民生活の変化に即応するように、政策形成能力の向上を図るものとする。
2 議会は、議長、副議長の選出に当たっては、第3条第2項の議員会議においてそれぞれの職を志願する者が所信を述べる機会を設け、その過程については本会議において傍聴者等にも明らかにし、その後ただちに地方自治法(法律第67号)に基づく選挙を行い、当選告知後に当選者は所信表明するものとする。
(交流及び連携の推進)
第9条 議会は、他の自治体の議会等との交流及び連携を推進するため、独自に、又は共同して、分権時代にふさわしい議会のあり方についての調査研究等を行うものとする。
(議会及び議員の責務)
第10条 議会及び議員は、この条例に定める理念及び原則に基づき議会運営に努めるとともに、この条例を実践することにより市民に対する議会及び議員の責任を果たすものとする。
(議会図書室)
第11条 議会は、議員の調査研究に資するため、議会図書室の充実に努めるものとする。
(議会事務局)
第12条 議長は、議員の政策形成及び立案を補助する組織として、議会事務局の調査及び法務に関する能力の向上を図るように努めるものとする。
2 議長は、事務局職員の任用に際しては、行政からの独立した機関としての機能を向上させるように努めるものとする。
(最高規範性)
第13条 この条例は、議会運営における最高規範であって、議会は、この条例に違反する議会の条例、規則、規程等を制定してはならず、その解釈や運用においても、この条例に基づくものとする。
(見直し手続き)
第14条 議会は、一般選挙を経た任期開始後、速やかに、この条例の目的が達成されているかどうかを検討する。
2 議会は、制度の改善が必要な場合は、厳格にして慎重な意思決定を期待する特別多数議決の趣旨を尊重し、全ての議員の合意形成に努め、この条例の改正を含めて適切な措置を講じる。
3 議会は、この条例を改正する場合は、いかなる場合でも改正の理由、背景を詳しく説明する。
附則
この条例は、平成25年4月1日から施行する。
附則(令和2年6月17日条例第18号)
この条例は、公布の日から施行する。